2024年3月22日金曜日

ポパーによる「プラトンの呪縛」(18)自然と協定(7)


















それでは、自然で完全だとされる最初の国家がどうして解体の芽を内在させることになったのか

自然で完全な国家には、そのような芽は生じない筈ではなかったのか

一切の作られたものは腐敗せざるを得ないと言うが、それが完全国家にはなぜ当て嵌まらないのかを説明してはいない

そこでプラトン(427-347 BC)が示唆したことは、最初の支配者が数学や弁証法に明るい哲学者であれば違ったということであった

しかし、実際には違ったというのだろう

さらに彼らは、監視者の種族に純潔性を維持するための優生学的な方策を知る必要があったというのである

高貴な血と労働者の卑しい血が混じるのを回避する方策である

しかし監視者はその知識を持っているわけではないので、血統保存が純粋になされることがなく、退化が始まるのである

彼らは知覚や経験に基礎を置いて考えるので、移ろいゆく信頼できるものではない

純粋に理性に基づき、数学的である学問が必要になるとプラトンは示唆する

しかし、高次の血統保存に関するカギを知らなかったため、腐敗は始まったのである

支配階級内部における分裂、人間本性(魂)の内部分裂が進行することになった

ヘラクレイトス(c. 540-c.480 BC)が言ったように、戦争、階級闘争が、あらゆる変化、人間の歴史の父であり、原動力なのである


プラトンの思想の根底には、形而上学的二元論があるという

論理においては、一般的なものと特殊的なもの

数学的思弁においては、一と多

認識論においては、純粋な思考に基礎を置く合理的な知と特定の経験に基礎を置く思い込み

存在論においては、根源的な変わらない真の実在的世界と多として変化を重ね人を欺く現象、すなわち、純粋な存在と生成、変化の対立

宇宙論においては、創造者と没落に委ねられた被造物

倫理においては、存続するものとしての善と没落して行くものとしての悪

政治においては、完全性と独立性を達し得る国家と、不完全であり依存せざるを得ない国家の統一のために抑圧されなければならない個人、人民の群との対立として表れている







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