2024年3月20日水曜日

ポパーによる「プラトンの呪縛」(16)自然と協定(5)






























本性についてのプラトンのこのような考え方は、ヒストリシズム的方法論にさらに接近させるという

対象の真の本性(本質、自然)を探究することが学問には課せられるが、プラトンによれば、ものの本性とはその起源になる

社会科学や政治学の場合、社会や国家の起源を探究することが課題になり、歴史がヒストリシズムの方法論になる

プラトンの場合、社会の起源は協定、社会契約で、それは自然な取り決め、人間の社会的本性に基づく取り決めなのである

人間の社会的本性とは個人の不完全性から生じ、その程度は人それぞれであるとした

国家はそれ自体で自立しており、個人の不完全性をより高いものに統合し得ると考える

国家が腐敗し分裂していく萌芽は国家の内にあるのではなく、不完全性を持つ個人の内に育つという


プラトンは政治的権威が基礎を置く原理をいくつか挙げ、生物学版自然主義についてこう言っている
「強者が支配し、弱者は支配されるべきであるという原理」があり、これは「テーベの詩人ピンダロス(522/518-442/438 BC)がかつて述べたように」自然に即した原理である
さらに、それに協定主義を結合して、こう続けている
「賢者が指導し支配し、無知なる者はしたがうべきであるというより重要な原理である。・・・これは自然に合致するものである」
人間は一人ではやっていけないので、自分の利益を促進するために集まってくる

しかし人間は等しくないので、分業という経済原理が導入される

この生物学版自然主義の要素は最初は無邪気な仕方で導入されるが、最終的には支配者と被支配者の分業に辿り着くことが明らかになる


唯物論者によれば、炎とか水、大地とか空気などは元々から存在するとされる

しかしプラトンは、そうではなく、そうあるのは魂だけであるという

秩序や法は魂から来るのだから、同じように元々からあるに違いなく、より起源に近いことになる

これは精神版自然主義に当たり、保守的な実定主義とも親和性がある

一切が偉大な立法者の知恵に委ねられ、それはプラトンの自画像であるとポパー(1902-1994)は言う









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