2023年12月26日火曜日

2023年を振り返って


























今年が終わるにはもう少し時間が残っているが、このあたりで1年を振り返っておきたい

このブログを始めたのが今年2月であったことも記憶の彼方に沈んでいた

今年から年初にプロジェを考えて歩むというこれまでのやり方を改めた

このやり方は、何かに縛られているという拘束感や義務感などが全く生まれないという点で非常に良かった

来年もこのやり方で歩みたい


さて、今年は何をやってきたのだろうか

大きなことを中心に書き出してみたい

年初には想像してもいなかったことが展開した年であったことが見えてくる

そして、それらすべてが「今年のプロジェ」になっていることが分かる、という仕掛けである

このことには少なくとも8年前には気づいていた


(1)新しい免疫論の刊行とその英語版の刊行準備

最も大きかったのは、昨年から準備してきた『免疫から哲学としての科学へ』が3月中旬に刊行されたことだろう

この本は、これまでにない視点から免疫を捉え直し、科学と哲学の関係についても考察を加えたものである

手に取ってお楽しみいただければ幸いである

ネット上にはあまり感想を見かけなかったが、週刊読書人図書新聞には書評を掲載していただいた

両紙には感謝したい

一般の方には届きにくかった可能性はあるが、免疫学をやっている人には届いてほしいものである

つい最近、この本の英語版がラウトレッジRoutledge)から刊行されることになった

その準備を始めたところだが、この作業から新たな発見があることを願うばかりである



(2)カフェ/フォーラムの開催、そしてサイファイ研究所 ISHE の10周年

昨年秋に3年振りに再開したカフェ/フォーラムだが、今年も以下のようなテーマについて、春秋の2回開催することができた

春のカフェ/フォーラム

◉ 2023年2月25日(土) 第9回サイファイカフェSHE 札幌 
テーマ: アナクシマンドロスと科学的精神

◉ 2023年3月1日(水) 第7回ベルクソンカフェ 
テーマ: アラン・バディウの幸福論を読む(2)――幸福と反哲学――

◉ 2023年3月1日(水) 第9回カフェフィロPAWL
テーマ: アラン・バディウの幸福論を読む(2)――幸福と反哲学――

◉ 2023年3月4日(土) 第8回サイファイ・フォーラムFPSS
プログラム:
 1)矢倉英隆  シリーズ「科学と哲学」② ソクラテス以前の哲学者-2
 2)久永真市  遺伝子と個性
 3)市川 洋  「人間の基本的な在り方」と「科学の在り方」

◉ 2023年3月8日(金) 第16回サイファイカフェSHE
テーマ: アナクシマンドロスと科学的精神


秋のカフェ/フォーラム

◉ 2023年10月21日(土) 第10回サイファイカフェSHE 札幌 
テーマ:『免疫から哲学としての科学へ』で、免疫、科学、哲学を考える

◉ 2023年11月8日(水) 第8回ベルクソンカフェ 
テーマ:J・F・マッテイの『古代思想』を読む

◉ 2023年11月11日(土) 第9回サイファイ・フォーラムFPSS
プログラム:
 1)矢倉英隆  シリーズ「科学と哲学」③ ソクラテス以前の哲学者-3
 2)牟田由喜子  H・コリンズ『専門知を再考する』:専門知は市民社会にどのように有用なのか?
 3)木村俊範  日本のテクノロジーには哲学が無かったのか、置き忘れたのか?――一テクノロジストの疑問

◉ 2023年11月14日(火) 第10回カフェフィロPAWL
テーマ:プラトンの『饗宴』と神秘主義

◉ 2023年11月17日(金) 第17回サイファイカフェSHE
テーマ:『免疫から哲学としての科学へ』を合評する


すでに触れているが、今年はサイファイ研究所ISHEの10周年に当たった

さらにこの活動の原点に遡れば、最初のカフェが開かれたのが 2011年11月なので、今年は12周年になる

因みに、この会の第1回から第4回までは「科学から人間を考える試み」と呼んでいたが、そのことも忘れかけていた

今、その名前を言葉に出せば、懐かしい響きがする

歴史の中に現在を置くことで違う景色が見えてくることもある

その意味で、振り返りは大切である

2013年、ISHE の設立に合わせて「科学から人間を考える試み」は「サイファイ・カフェ SHE」に名を改め、そして先月、その表記を「サイファイカフェSHE」としたばかりである

今月に入り、当研究所の英語版がないことに気付き、大枠を作成した
これから内容を充実していく予定なので、折に触れてご覧いただければ幸いである


このように長きに亘って活動できたのも、偏に会の趣旨に賛同され参加された方がおられたからに他ならない

これまでに参加された皆様には、改めて感謝の意を表したい

今後もご理解、ご支援をいただければ幸いである



(3)カフェ/フォーラムやブログで取り上げた哲学者

濃淡はあるものの、今年は以下のような哲学者について触れた

タレス(c. 624-c. 546 BC)

アナクシマンドロス(c. 610 - 546 BC)

ピタゴラス(582 - 496 BC)

ヘラクレイトス(c. 540 - c. 480 BC)

パルメニデス(c. 515-c. 450 BC)

エンペドクレス(c. 490-c. 430 BC)

プラトン427 - 347 BC

シェリング(1775 - 1854)

出 隆(1892 - 1980)

ハイデガー(1889 - 1976)

田中美知太郎(1902 - 1985)

井筒俊彦(1914 - 1993)




(4)その他

上記以外の出来事として、以下のようなことがあった

5~6月に3年振りにパリを訪問する機会が巡ってきた

考えてみれば、わたしもコロナの影響を受けた一人と言えるだろう

おそらく影響を受けていない人はいないのではないかと想像しているが、、

今回の滞在では昔の感覚を取り戻すとともに、また訪問したいという気持ちが湧いてきた


それから、年末に向けてその程度が増してきたことに、時の流れが「揺蕩うように」感じられるようになっていることが挙げられる

さらに言えば、時の流れが消えている、あるいは時の流れが全く意識されない永遠の状態にいるということである

これは非常に重要な変化ではないかと考えている


このような時の流れの中で、新しいプロジェのシーズのようなものがいくつか浮かんできた

これらについては、これから身の回りに漂わせておいて、じっくり栄養を与えながら、それぞれの成長を見守っていきたい

その中のあるものは来年のこの日に「今年のプロジェ」になっているかもしれない

そうなるとすれば、これに優ることはないだろう












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