2023年4月9日日曜日

科学における革新と理解と説明

































今年の1月、Nature誌に「論文や特許がどんどん革新的ではなくなっている」という論文が出た

過去のものとの乖離が少なくなっているというのである

過去60年の間に出た4,500万篇の論文、390万件の特許をCDという指数で解析した

CD指数とは、これまでの結果を確固たるものにしたのか(consolidating)、過去の結果とは断裂しているのか(disrupting)を示すものである

CからDの間が-1から1で表される

その結果を大雑把に言えば、程度の差はあるもののあらゆる分野においてCD指数が下がっているという

つまり、革新的な成果が出にくくなっているという結果である

著者らが使っているもう一つの指標は、論文や特許で使われている言語である

創造とか発見に関係する言葉が多いのか、改良や応用に関するものが多いのかという評価である

こちらでも同様の傾向が見られている

ただ、これは全体的な傾向で、画期的な成果は少ないながらもコンスタントに出ているという

つまり、新しい領域はまだ存在していると考えられる


このような革新性の低下の原因はどこにあるのだろうか

知識の増大に伴い科学者は対応が難しくなり、自分が馴染んでいる狭い範囲に留まることになる

リスキーなプロジェクトや長期的なプロジェクトには金が出ないので、その方がキャリアを築く上で有利に作用するからである

とすれば、科学政策にも問題があることになる

このような背景が革新的な成果を生み出すことを妨げているのではないかという



この論文が革新性を科学に求めていることに疑問を挟む人もいる

それは現在横行しているイデオロギーの中での議論になる可能性があるからである

科学とは何が何でも新規なものを求めるものではなく、説明し理解することを規範とすべきではないかという考えに基づく疑義である

それから数字による評価が行き過ぎると、スポーツ選手のドーピングのように、科学者の行いにも悪い影響が出てくるという

説明と理解の重要性については『免疫から哲学としての科学へ』においても触れている










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