2024年2月7日水曜日

ポパーによる「プラトンの呪縛」(5)プラトンのイデア論

































本来のヒストリシズムを徹底するならば、歴史的運命の法則を人間の力によって変えることができないと考えるだろう

しかし、プラトン(427-347 BC)はそれが可能であると考えていたようである

彼のヒストリシズムを、それとは正反対にある社会工学的な態度と比較してみたい


社会工学者は、歴史とか人間の運命といったものを問うことはない

彼等は自分たちの力により人間の歴史に影響を与え、変革できると信じているが、それらは歴史によって課せられたものだとは信じていない

自分たちの目標に合わせて自らが作り出したもの、あるいはそのために必要になる社会技術こそが政治の科学的な基礎であると見ている

したがって、例えばある制度について考える時、一つの目標を達成するためにはこの制度は役立つように組織されているのか、そうでないとすればどうすれば利益を最大化できるのかというようなことが問題になる

これに対して、ヒストリシストは、政治行動が理解可能になるのは歴史の将来の成り行きが定められる必要があると考え、制度について見る時にはその起源や使命、真の役割を発見しようとする


プラトンの政治哲学や社会哲学は、この両面が結びついた結合体だったという

彼の政治目標はヒストリシズム的教義によっている

1)目標は、歴史過程の腐敗において出現するヘラクレイトス的流転を免れること

2)それを成し遂げるためには、腐敗に染まらない完全国家を樹立すること

3)完全国家のモデルは、歴史の腐敗を経験していない黎明期にある


変化する事物は、退化し腐敗する

その変化するものの大元に当たるのが、「モデル」あるいは「イデア」であった

プラトンにとってのイデアは、起源であった

ここで注意しなければならないのは、形相・イデアは心の中の観念ではなく、普通の事物よりも実在性が高いことである

ただ、それは時空間の内部ではなく、空間の外、時間の外に存在する

感覚器では把握できず、ただ純粋な思考によってのみ近づくことができるという

(これは、観念ではないということとどのような関係にあるのか)









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