ポパー(1902-1994)の『開かれた社会とその敵』の最初のテーマ「プラトンの呪縛」に入りたい
最初のセクションは「起源と運命の神話」と題され、
第1章がヒストリシズムと運命の神話
第2章はヘラクレイトス
第3章はプラトンのイデア論
となっている
今日は第1章を読むことにしたい
政治に対して真に科学的、哲学的な態度をとるためには、人間の歴史を考察、解釈しなければならないという考えがある
学者はものごとをより高いところから考察するのだというが、その場合普通の人間は考察の対象から消え、偉大な民族とか指導者、偉大な階級とか理念がその対象となる
その中から歴史発展の法則を明らかにし、未来の予測を可能にするのだという
これがポパーの言うヒストリシズムの考え方である
もしこの方法が使えないものであり、価値のない成果しか生み出さないのであれば、その生成と成功をおさめた理由を研究するのは有益だろう
ヒストリシズムの古くからある単純な形態の一つに選民思想がある
この思想は、有神論的な解釈をとると、この世界の原作者である神がその意志の実現のために一つの民族を選んだと見做す
しかし他の形態では、神の意志ではなく、自然法則であったり、精神発展の法則であったり経済発展の法則であったりする
選民意識は部族を組織の原理とする社会から産まれた
部族主義は、部族の前にあって個人はいかなる意義も持ちえないとする立場である
同様に、部族の代わりにグループ、集団、階級を強調する立場もある
もう一つの側面は、歴史の目標を遥か彼方の未来に置くため、その間の行程がどのように乱れようとも最終的に保証されてしまうことである
選民思想は、右翼における人種主義やファシズム、あるいは左翼におけるマルクス主義の特徴と合致している
人種主義では民族に代わり選ばれた人種が登場し、その生物学的優越性が歴史の成り行きを説明する
また、マルクス(1818-1883)の哲学においては選ばれた階級がが取って代わり、経済主義的発展法則で説明される
これらの起源にはヘーゲル(1770-1831)の哲学があり、ヘーゲルは古代のヘラクレイトス(c. 540-c. 480 BC)、プラトン(427-347 BC)、アリストテレス(384-322 BC)の影響を受けている
そのため、これからこれらの哲学について検討を加えることになる
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