2024年2月4日日曜日

ポパーによる「プラトンの呪縛」(2)ヘラクレイトス



























今日は、ポパー(1902-1994)の「プラトンの呪縛」の第2章ヘラクレイトスc. 540-c. 480 BC)を読みたい

ヘラクレイトスについては、昨年秋の第9回FPSSでも取り上げたので、どのような話が出てくるのか興味深い


ヒストリシズムの関連で、古代ギリシアで選民思想に相当するものが最初に見られるのはヘラクレイトスだという

ホメロス(8th century BC?)の有神論的(多神論的)歴史解釈では、歴史を生み出しているのは神の意志ということになる

ただ、ホメロスの神々は歴史の法則を決めているわけではない

ヒストリシズムの明確な教義を導入した最初のギリシア人はヘシオドス(8th century-7th century BC)である

歴史の発展には一般的な傾向があると考えていた

ヒストリシズムの流れが頂点に達したのは、プラトン(427-347 BC)においてであった

彼はヘシオドスの影響下にあったが、最も重要な影響を受けたのはヘラクレイトスからであった


それまでは、オリエント思想の影響を受け、世界は物質により構築された建造物と見ていた

そのため哲学者の問いは、「世界はいかなる素材からどのように作られているのか」であった

しかしヘラクレイトスは、そのような建造物、安定した構造、コスモスは存在しないと考えた

むしろ、世界を巨大なプロセスとして、あらゆる出来事、変化、状態の全体として、想定したのである

「すべては流れ、何ものも静止していない」というのが彼の考えであった

彼の哲学は、パルメニデス(c. 520-c.450 BC)、デモクリトス(c. 460-c. 370 BC)、プラトン、アリストテレス(384-322 BC)の哲学に大きな影響を与えた


ヘラクレイトスは、自然のみならず、倫理的、政治的問題にも関わった最初の哲学者であった

彼が生きた時代は、部族的貴族政から民主政に移行する変革の時代だった

部族的貴族政における特徴は、誰もが社会構造の中に自分の居場所を持っているということである

ヘラクレイトスは、自分の居場所であるエフェソスの司祭王一族の当主の座を弟のために放棄したが、貴族たちの大義は支持していた

例えば、こんなことを言っている

「一人の男の意思に従うのが掟であろう」

「民衆は、城壁を守るために戦うように都市の掟を守るために戦うべきである」

しかし、年の掟を守るための戦いは実らず、無常さが彼の心に刻まれた

それが彼の変化の理論に反映されているのではないかとポパーは言う

「万物は流転する」

「人は同じ川に二度と入ることはできない」

このように生成流転を強調することは、ヘラクレイトスに限らず、ヒストリシズムの重要な特徴だという

しかしその背後に、変化することのない運命の法則が存在するのだという信仰が結びついているのである

これもヒストリシズムの特徴である

その原因は、ヒストリシストたちが実は変化に無意識の内に抵抗しているからではないかという

そう言えば、パルメニデスやプラトンは、この世界は生成流転であり幻想にすぎず、何ら変化のない世界が実在すると考えていた









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