2024年2月16日金曜日

ポパーによる「プラトンの呪縛」(8)静止と変化(2)
























プラトン(427-347 BC)が社会学的な問題を論じているのは、『国家』『政治家』『法律』という後期の対話篇である

プラトンが抱えていた問題は、国家の原型・起源は完全で不変な国家だったので、それを変化させる最初の運動をどう説明するのかであった

『国家』によれば、原初の形態は「最善国家」で、最も賢く最も神に似た人間が統治する王国である

これが変化するのは理解しがたいのだが、プラトンはその原動力を私欲、物質的経済的利益の追求から生じる内部抗争、階級闘争に見ていた

マルクス(1818-1883)が言う「あらゆる社会の歴史は階級闘争の歴史である」に通じる考えである

プラトンの『国家』によれば、以下の4つのステージを経て政治的腐敗が起こるという

完全国家に続くものは、名誉や名声を求める野心的な貴族の支配である「名誉政」で、プラトンはスパルタクレタにこの形態を見ていた

これが野心により分裂し、次いで富裕な家族群が支配する「寡頭政」が現れる

そこでは、競争や致富に向かう風潮が著しくなり、初めての階級闘争が生じる

寡頭政の側と貧困階級との争いから内乱が勃発し、支配者側が抹殺され、自由(放縦)、無法が支配する民主政が生まれる

プラトンは個人の自由を放縦と言い、法のもととの平等を無法状態と言っている

この他にも民主政に対して罵詈雑言を浴びせているところがあるという

最後に最終的な病としての僭主政が来る

その移行に際して、民主政における富者と貧者との階級的敵対関係を利用して、大衆受けする指導者が親衛隊を作るのはいとも簡単だと言っている

そして最初は自由の擁護者として拍手していた人たちも、やがて隷属させられ、矢継ぎ早に起こされる戦争では彼のために戦わざるを得なくなる

そこで最悪の国家形態が達成されるのである

『政治家』においては、完全国家の退化したコピーとしての僭主政、王政、寡頭政、貴族政、民主政について論じているという

いずれにせよ、これまでに指摘したように、プラトンの歴史は社会が腐敗する病の歴史のことなのである










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