2024年2月19日月曜日

ポパーによる「プラトンの呪縛」(10)静止と変化(4)
























ポパー(1902-1994)の論述はこれでもかという調子で、わたしにはかなりしつこく見える

早速始めたい


支配階級の起源や教育に関するプラトン427-347 BC)の考えを理解しようとすれば、次の2点に注意しなければならない

第1は、スパルタとかクレタという過去の国家を再構築しようとしたこと

第2は、その国家の安定性の条件を支配階級の内部に求めたこと

支配階級の起源に関しては、最初の最善国家に先行する社会は族長の支配する山岳遊牧民の社会であったと言っている

家父長の支配下にあるのが、最も正当な支配であるとしている

ペロポネソス半島のスパルタなどに定住したドーリア人が支配人種の起源であり、山岳遊牧民が訓練された武装戦闘集団となり暴力的に居住民を征服したのが定住の実態である

プラトンによれば、よき支配者とは家父長的な牧者であり、支配の技術とは人間という家畜を押さえつけておく牧羊犬的能力である

支配階級の統一を保つためには、優生学的な幼児殺しをも擁護する

これはアテナイでは制度化されていなかったが、スパルタでは行われていた

古くからあるこの制度はよいに違いないとプラトンは判断した

もう1つ重要なのは、統治者や補助部隊は獰猛にして柔和な相対する性格を持っていなければならないということである

プラトンは体育と音楽(あらゆる文芸的な勉学を含む)によって、この2つの性格を学ばせようとした

すなわち、体育によってより獰猛になり、音楽によって優しく麗しくなるので、2つを結合できるのである

魂における柔和な要素を哲学の才能と同一視したプラトンだったが、音楽的・文芸的教育をよしとはせず、最強度の制限を課そうとした

ポパーはプラトンのこの態度が信じられないと言っている

それはアテナイよりはスパルタの慣習を選んだ結果であるが、クレタは音楽に対してさらに敵対的だったという

スパルタは体育に重点を置き過ぎ、アテナイは音楽を重視し過ぎたということだろう

いずれにせよ、支配する際に獰猛さは欠かせないが、それが優しさによって緩和された時にのみ、その支配は成功するとプラトンは考えていたようだ










0 件のコメント:

コメントを投稿