プラトンの呪縛に久し振りに戻ることにしたい
第5章は「自然と協定」と題されている
社会現象を学問的に捉えたのは、プラトン(427-347 BC)が最初ではない
ソフィストのプロタゴラス(c. 490-c.420 BC)の世代にまで遡ることができる
彼は人間を取り巻く環境を、自然環境と社会環境に分けて考えた
しかし、この両者を分けることは困難を極め、現代まで引きずっている
原始的な閉じた社会、あるいは部族社会を特徴づけるのは呪術的態度である
タブーや掟や慣習を季節の循環的推移あるいは自然の規則性と同じように、変更不能なものとして受け止める
こうした閉じた社会が壊れて初めて「自然」と「社会」の区別を理論的に解析できるようになる
この発展を分析するための重要な区別は、自然法則と規範としての法律や規範との識別である
自然法則の場合、変更や例外は認めないのが普通である
それに対して、規範としての法律の場合は変更可能で、受容や拒絶があり得るので真・偽はない
しかし多数の思想家は、自然法則と並ぶ規範が社会にも存在すると考えている
プラトンの社会学を理解しようとするならば、自然法則と規範としての法律の区別が成立した過程を考える必要がある
出発点は素朴一元論で、閉じた社会秩序の特徴である
この段階では自然法則と規範としての法律が完全に分離していない
この段階には、素朴自然主義と素朴慣例主義の2つの可能性がある
前者における規則性は自然のものでも慣習によるものでも変更不可能とされるが、後者の規則性は神々や霊が決めたもので、自然法則でさえ場合によっては変更される
最終段階は批判的二元論あるいは批判的協定主義と呼ばれるもので、開かれた社会の特徴である
魔術的社会が崩壊する原因は、タブーが部族により異なり、それを作っているのは人間だと認識され、自然法則との違いが意識されたことである
ギリシア哲学では、「事実と規範」を「自然と協定」の対立として語っている
自然は事実と規則性から成り立っているが、道徳的でも非道徳的でもない
我々は世界によって生み出されたのだが、自然は我々に世界を変革、予測し、未来を計画し、道徳的に責任ある決定を下す能力を与えてくれた
責任と決定がこの世界に我々と共に初めて登場したのである
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