2024年2月29日木曜日

ポパーによる「プラトンの呪縛」(13)自然と協定(3)






























2)倫理的実定主義は、事実として存在している規範(法)に還元されなければならないと信じている

存在するものは善であり、力は正義なのである

この立場からすれば、個人が規範を判断できると考えるのは大きな間違いであり、個人は社会が提供する規準に従うだけである

保守的であり、権威主義的な立場なのである


3)心理学主義的あるいは精神版自然主義は、上記2つの考え方の結合であり、それぞれの一面性に対する反論から議論される

倫理的実定主義者は、規範が人間の心理学的側面並びに社会の本性の表現であることを見落としている

同様に生物学版自然主義者が考える我々の自然な目標、規範――例えば、健康、食べること、寝ること、繁殖――に限定されていないことを見落としている

人間はパンのみに生きるのではなく、より高い精神的な目標を目指している人もいるのである


この立場はプラトン(427-347 BC)によって初めて述べられた

それは、ソクラテス(c. 470-399 BC)の「精神は身体よりも重要である」という理論の影響下にある

この立場は前二者よりも我々の感情に訴えてくる

しかし、これも人道主義的態度とも権力賛美とも結合される

例えば、トマス・ペイン(1737-1809)やカント(1724-1804)は、あらゆる人間個人の「自然な権利」を承認するために用いた

他方、特にプラトンによって、「優れた者」「選ばれた者」「賢者」「生れついた指導者」などの特権を正当化するために利用された


これらの考え方は、規範を事実に還元しようとする傾向と、我々のみが我々の倫理的決定に対する責任を負うという考えを認めまいとする傾向を持っている

たとえどのような権威が問題になろうとも、その権威を承認するのは我々である

その責任から逃れることはできないのである









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