2024年2月18日日曜日

ポパーによる「プラトンの呪縛」(9)静止と変化(3)














プラトン427-347 BC)が描いた完全国家、最善国家は具体的にどのようなものだったのだろうか

普通は、進歩主義者が抱くユートピアを目指すものではないかと解釈されてきた

しかしプラトンは、クレタやスパルタに見られる古代の原始社会の氏族的な形態を考えていたのではないかとポパー1902-1994)は言う

この2つの都市国家は古いだけではなく、硬直して動きを奪われた石のようになっているが、これをさらに安定・強化しなければならないとした

そのために、内部分裂を免れ、階級闘争を回避し、経済的影響を最小にする方法を明らかにしようとしたのである

プラトンが考えたのは、平等に向かうのではなく、奴隷制国家、身分制国家であった

支配階級が打倒されることのない圧倒的力を持つことで、この問題を解決しようとした

支配階級だけが武器の携帯を許され、政治上の権利を持ち、教育を受ける権利を有したのである


プラトンの最善国家には、3つの階級がある

つまり、統治者、統治者のための武装した補助部隊戦士、労働者の3つだが、現実的には軍事に従事する支配者と被支配者の2つだけである

労働者は支配階級の物質的必要を満たすための家畜に過ぎないとプラトンは考えていた

金銭で売買された人間は奴隷として区別したが、その制度の廃絶についての言葉はないという

支配者階級だけが政治力を持つ状況下で問題になるのは、階級間ではなく支配者階級内での経済的利害の対立であった

そのために共産主義(私的所有の禁止、財産の共有、家族の解体、)が導入された

そこに、統一を脅かす富も貧困も存在してはならなかったのである

そして、支配者階級は被支配者階級に対して、人種、教育、価値判断という3つの点における優越性があると主張することで統一を正当化したのである

ポパーは、人間の優越性や卓越性がそのまま政治的権利の付与につながらないどころか、寧ろ道徳的責任が生じると考えている







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