2024年2月6日火曜日

ポパーによる「プラトンの呪縛」(4)プラトンのイデア論

































今日は「起源と運命の神話」の第3章(プラトンのイデア論)を読みたい

プラトン(427-348 BC)は戦争と政治的激動を生きた

彼が若い時、アテナイでの部族生活は崩壊し、僭主政を経て民主政へと進んだ

スパルタとのペロポネソス戦争(431-404 BC)は、中断を挟んで28年にも及んだ

プラトンが生まれたのはこの戦争が始まってからで、終わった時には20代前半の青年であった

この戦争中に疫病が起こり、自らも病に侵されながらトゥキュディデス(c. 460-395 BC)が『戦史』の中で詳述しているが、その中に免疫現象を示唆する有名な記述がある


このような時代背景が、ヘラクレイトス(c. 540-c. 480 BC)同様、プラトンの中にある政治的不安定性、不確実性の要素を決定していた可能性がある

そこからプラトンは、政治的な状態だけではなく、万物は流転するという認識を持つに至ったのである

王家の血を引く彼は、当初は政治的活動を望んでいたが、青年期に体験した激動により、その熱が冷めて行ったようだ

そんな中、過去のヒストリシストと同様、歴史の発展法則を立てて自らの経験を概括した

その法則とは「あらゆる社会的変化は、退廃、腐敗、退化に至る」であった

これは、あらゆる生み出されたものに当て嵌まる宇宙的法則の一部であった

人間の歴史は宇宙的な枠踏みの中で紡ぎ出されるという考えで、彼の時代は最も深い退廃の時代であると見ていた


プラトンとヘラクレイトスの考えには類似点はあったが、プラトンは歴史的宿命(腐敗)の法則は、人間の道徳的意志によって打破できると考えていた

歴史の腐敗は、結果として道徳の腐敗をもたらすと信じていた

政治の腐敗は道徳の腐敗、知識の欠如が原因だと考えていた

そこでプラトンは、腐敗も変化もしない最善にして完全な国家を求めたのである

通常の腐敗する対象に対応する腐敗することのない完全な対象があると考えたのである

それが形相あるいはイデアと呼ばれるものである











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