2024年4月22日月曜日

ゲーテのヘルダー評

































その人のことをあまり知らずにエッセイなどに名前を引用することがあった

振り返れば多くはドイツの文化人で、その後再会してより詳しく知ることになった

その中には、例えばフリードリヒ・シュライアマハー(1768-1834)やヨハン・ゴットフリート・ヘルダー(1744-1803)などがいる

ゲーテ(1749-1832)の自伝『詩と真実』を読んでいると、ヘルダーの魅力に惹かれる様子が書かれている

今やゲーテに比べると知名度は比べ物にならないが、当時はヘルダーが5歳年長で幅広い領域で活躍していた

ゲーテも指摘しているように、若い時の5歳違いは大した差であった

最初の出会いの印象を次のように語っている

彼は如才ないといった人ではなかったが、その態度にはなにかもの柔らかなところがあり、礼儀正しく上品な人であった。丸顔、秀でた額、いくらかずんぐりした鼻、少しめくれた、しかしきわめて個性的な感じのいい愛らしい口。黒い眉と漆黒の目。その一方はいつも炎症を起こして赤くなっていたが、目には光があった。彼はなにかと質問して、私のことや私の境遇を知ろうとした。そして私はますます強く彼の魅力にとらえられた。

ヘルダーはきわめて好ましい、魅力ある、才気豊かな人であったが、他面、ややもすれば不快な面をあらわにする人でもあった。このように人を惹き寄せたり撥ねつけたりすることは、誰もが生来もっているものであって、程度に差があり、それの現れる頻度に違いがあるに過ぎない。こうした性情を真に克服できる人は稀であり、多くは克服したようなふりをしているだけのことである。


そしてヘルダーが後年成し遂げたことを思い、この時彼の中にはどのような変化が起こっていたのかにゲーテは思いを馳せる

このような精神のうちに、いかなる動きがあったか、このような資性のうちに、いかなる醗酵があったのかは、到底とらえることも述べることもできるものではない。しかし、彼がのちに多年にわたってつとめ、成し遂げたことを考えてみるとき、彼のひそかな努力が非常なものであったことは、容易に察せられるのである。

 (山崎章甫訳)











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