3月14日には第20回サイファイカフェSHEが開催されたが、コメントが届かなかったので省略した
ということで、今日は4月12日に開催された第13回サイファイカフェSHE札幌について紹介して、この小シリーズを終えることとしたい
テーマ:『免疫から哲学としての科学へ』を読む(1)免疫の理論史
会の要旨:
今回から、参加者からの提案を受け、拙著『免疫から哲学としての科学へ』を読み解くことにいたしました。第1回目は、その第1章「免疫学は何を説明しようとしてきたのか」を取り上げます。免疫学の理論史、思想史のような内容ですが、そこに科学という営みの特徴や哲学との関連が垣間見えることと思います。参加予定者は前もってこの章をお読みいただいた上で参加されると、免疫に関する理解が深まると思います。
寄せられたコメント:
◉ 昨日は力のこもったゼミ、どうも有り難うございました。次回をまた楽しみにしています。
◉ 全体(哲学)と部分(科学)の2つの解析の織り成す循環が免疫学の歴史でもあると感じ、人類のあくなき探求を垣間見た気がしてとても興奮しました。仮説が条件によって破壊され、新しい仮説にとってかわる。それが、より客観的、俯瞰的になることで新しい発見が起き、それが最終的には、統一理論にまで繋がるイメージができました。
目に見える状態で観測しなければ、科学じゃないとノーベル賞を取得したシェルドン・グラショーも言ってましたが、例えば、虚数という数字は人間には観測できない数値であるにも関わらずに、その概念を数学方程式に入れることにより飛行機が飛ぶ、という現実的な実用まで至っている。このことから、科学という人間の観測領域だけでは理解できない世界が、哲学という全体を捉えた学問によって、解明されていくイメージが沸き、次回の参加もとても楽しみになりました。
ありがとうございました!
◉ 昨日はいろいろと教えていただき、誠にありがとうございました。非常に楽しい時間でした。外界の刺激の前から存在する細胞に関して外界からの刺激でその後の運命が決まるという点では、免疫細胞のクローン増殖は不均一であるがん細胞のクローン増殖(進化)と類似しているなと改めて感じました。
昨日問題になったCDR1とCDR2の遺伝子配列の多様性獲得のメカニズムというのは、抗原認識後の体細胞超変異の段階でCDR1とCDR2に変異が入ったクローンが有利で選択されるというメカニズムではなく、抗原認識前にV遺伝子のCDR1とCDR2だけに多様性があることのメカニズムということでしょうか?その場合だと、V遺伝子のCDR1とCDR2に変異が入り多様性が生まれるとそのような個体が免疫的に進化的に有利だったからでしょうか。
8月の会も参加できれば参加させていただきます。
今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
◉ サイファイカフェSHE札幌 第13回の免疫論を読む(1)に参加させて頂きました。『免疫から哲学としての科学へ』を読むをテーマに、これまでにない参加人数(9名)で開催。免疫学という、微生物・外来異物への反応現象、生体の外との関連の中で個体の恒常性を保つ仕組み、そしてメタファーとしての免疫という用語の成り立ちからまずはスタート。外的要素との関連性から、生体反応の的確な観察、例えば免疫反応の強力化や免疫記憶など、生物としての人間集団の生体反応の的確な観察と正確な記述を基盤として、歴史的時間軸の中で熟考を重ね、仮説を提示するその熱量にまずは感嘆した。遺伝子はおろか、その現象の主役となる細胞の本態すら明瞭化していない時代に、そこまでの仮説を組み立てる思考能力に畏敬の念すら覚えざるを得ない。分子生物学、そして遺伝子組み換えといった人為的技術が高度に発展した現在を座標軸として、当時の思索、仮説を眺めてもその正確さに驚くこと頻りである。これぞ、免疫を軸とした科学者の哲学的思考の足跡と感じたのは自分だけではないと思う。あっぱれ。
◉ 昨日は大変楽しい会に参加させていただきありがとうございました。先生のお話は、主に免疫学のこれまでの歴史についてでしたが、既に確立された免疫についての知識の表層の部分を少しだけ知っている程度の我が身にとって、その確立に至るために多くの天才的科学者たちが多大なエネルギーを注ぎ込んで行なった仕事の事を思うと、結果はどうであれ、本当に頭が下がります。懇親会では、先生はじめメンバーの方々から、免疫や科学一般や哲学のこと、また言語や生死のことなど、興味深い話をたくさんお聴きすることができました。話は尽きず、野菜の育て方も丁寧に教えていただきました。次回も楽しみにしております。
先生以外の方のお話もという件につきましては、外部からの講師にお願いするという事であればよいのですが、内部の方のお話となると、お話する方の負担が大きくなりますので、慎重に考える必要があると思います。いずれにしましても、敷居が低く、広く開かれた会であってほしいと思います。
◉ 先日は、貴重な会を開催して頂きありがとうございました。先生の「科学の形而上学化」が具体的に展開される著書の学習は、知的な興奮を呼ぶものでした。また、懇親会では、医師ではない私にとっては、普段聞けない医師の意見を聞け、非常にためになるものでした。札幌では、こういう会は非常に貴重であり、人数が増えていくのも肯けます。
◉ 今回は参加者9名と過去最大の参加人数(?)となっただけあり、本会~懇親会を含めてより活発で様々な質問、感想、意見が取り交わされた感がありました。免疫の現象は紀元前の古代ギリシア時代に既に当を得て直観されていました。免疫という言葉自体はその後の古代ローマ時代に生成、その始原的な語義としては義務や負担からの免除に由来するものだったとのことです。病気から逃れる何らかのメカニズム(免疫)があるとの直観から由来していたにも関わらずそれに該当する医学的な用語が当時見当たらなかったせいか、法・倫理系の用語からヒントを得て作られたというのは、今考えると非常に示唆的です。”示唆的”というのは、免疫学という分野が追究されていく中で人間・生き物、自然の本質、さらに社会・倫理・法(人文系への敷衍には賛否両論はありますが)への思考を類推・誘発されやすく、従って”哲学的”思考にも馴染じみやすい主要な科学的分野の一つではないかという意味合いにおいてです。
実験生物学の黎明期である18世紀から免疫学の知見が積み重ねられていく中で、現代に至っては免疫を担う分子の同定が飛躍的に増加、それとともにメカニズムも複雑化しながら、アウトサイダー・マッツィンガーによる危険理論の提示等免疫という概念自体が広がり、再考も求められているといったexcitingな流れで第1回目講演が終了しました。
ありがとうございました。次回はどういう展開になるか今から楽しみです。
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