今日は大阪大学で開催された科学と宗教に関するファラデー・セミナーに参加した
科学と宗教の研究では何が問題になっているのかの感触をつかむためであった
このシンポジウムにはケンブリッジ大学のファラデー科学・宗教研究所のメンバー3名が講演され、日本側の世話人である大阪大学の細井宏一氏が加わった
プログラムは以下の通りである
1)Denis Alexander(デニス・アレクサンダー:ファラデー科学・宗教研究所名誉所長): Joining Science with Larger Questions in Cambridge(科学と大きな課題へのケンブリッジにおける接点)
2)Graham Budd(グラハム・バッド:ファラデー科学・宗教研究所エグゼクティブ・ディレクター): Artificial Intelligence and Modern Society(人工知能と現代社会)
3)Mike Brownnutt(マイク・ブラウナット:ファラデー科学・宗教研究所コース・ディレクター): Relational Connections with Artificial Intelligence and Technology(人工知能とテクノロジーの関係性)
4)細井宏一(大阪大学・接合科学研究所招聘教授): Fusion of three science fields to solve modern issues(問題解決への3つのサイエンスの融合)
Graham Budd (Executive Director, The Faraday Institute for Science and Religion)
全体の印象は、科学と哲学の関係を研究してきた者にとって、科学と宗教の関係も同質のものではないかということであった
なぜなら、科学とこれまでの科学が排除してきた分野の交流を取り戻すということが主要な課題として捉えられているからである
その意味では、研究の枠組みには大きな違いはなさそうだという感触を得た
現代の科学者の立場で優勢だと思われるのは還元主義だが、そこには哲学としての還元主義(存在論的還元主義)と方法論としての還元主義がある
前者は還元主義に基づく科学的アプローチがすべてを解決できるという考え方で、未だに根強い
この立場の人に目を覚ましてもらうために何が必要なのかが問題になるのだろうが、これは、という策はなかなか見つからない
辛抱強く領域を跨ぐ視点を訴えていくしかなさそうである
デニスとは免疫学の領域にいた時に共同研究をしたが、2009年にケンブリッジで開催されたダーウィン祭で予期せぬ再会を果たした
「科学と宗教」を考えるためのメモランダム(医学のあゆみ 280: 184-187, 2022)
それからすでに15年が経過したことになるが、再び大阪でお会いすることになろうとは
人生の不思議を感じる
インターミッションでの話では、現代の問題には教育がかなり大きな影響を及ぼしているのではないかという点で一致した
イギリスでも理系と文系の選択を高校時代、あるいはそれ以前にしなければならない状況にあるため、若い時に一方の知の領域がブロックされてしまうという
日本の状況も変わりがないので、このあたりから変えていかなければならないのではないだろうか
この問題は、昨日の話と繋がって来そうである
Mike Brownnutt (Course Director, The Faraday Institute of Science and Religion)
若いマイクさんともかなり話ができ、参考になる情報をいくつか得ることができた
今日はマイクさんとグラハムさんがAIの問題について話をされた
AIについて考えるということは、最終的には人間とは何かという究極の問いと向き合うことに繋がることに気づく
古代ギリシアからの問いである
その意味では、哲学と深く結びつかざるを得ない領域なので、面白いテーマになるのではないだろうか
スケールの違いはあるものの、サイファイ研ISHEとファラデー科学・宗教研究所の方向性には違いがないというのが、今日の結論と言えるだろう
大いに力を得たセミナーとなった
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