2024年11月17日日曜日

パルメニデスの「存在」と「サイファイ」の道
















今朝、少しの間テレビをつけた

新日本紀行で奈良が取り上げられており、もう終わるところであった

一人のご老人が、山の上から景色を眺めながら次のようなことを言っていた

 「世の中はどんどん変わっていくが、変わらないのはこの自然です」

これを聞いた時、秋シリーズで取り上げたパルメニデス(c 520-c.450 BC)が浮かび上がってきた


彼の説は、大ざっばに言えば、次のようなものであった

絶対的な真理とも言える変わることのない「存在」と、流れ移ろいゆく確実なものがない「非存在」がある

我々は「非存在」の道は避け、「存在」の道を求めなければならない

ただ、「非存在」の世界を知ることも必要である

「非存在」の世界とは、動きの中にある現象を解析する科学の道であった

したがって「存在」の世界とは、それを超えたものになる

「サイファイ」の世界にある者はその道に入った人たち、と言えるかもしれない

奈良のご老人は「存在」の中に「自然」を見ていた

それは、「自然」の中に「絶対的真理」を見い出した現代フランスの哲学者マルセル・コンシュ(1922-2022)にも繋がるのである


現代の奈良で、古代ギリシアのパルミニデスとその解釈者の一人であるコンシュが出てくるとは、、

興味深い瞬間であった








2024年11月16日土曜日

この秋のカフェ/フォーラム・シリーズを振り返って


























昨日のカフェで秋のカフェ/フォーラム・シリーズが終わったことになる

今回は3つの会であったが、いろいろな変化が起こった

最初のベルクソンカフェでは、本文を読む会とその内容について語る会を別にしてはどうかという提案をいただいた

次回に試みとしてやってみるのも面白いかもしれない


それから、サイファイフォーラムFPSSには学生さん4名が参加された

若い方の参加により、良い意味での緊張感のようなものが生まれていたのではないだろうか

議論も充実したものになった

学生さんに声をかけていただいた竹田扇氏には感謝しかない


最後のサイファイカフェSHEにも新たに4名の参加があり、いつもとは違う雰囲気が流れていた

今回は読書会ということもあり、プロジェクターは使わず、前もって関連資料を参加予定者に配布した

この会を始めた当初、事前に資料をほしい旨の声を聞いたこともあったが、準備を直前までやりたいというわたしの事情でなかなか実現しなかった

次回のカフェでも可能であれば試みてみたい



ということで、新しい風が吹いたこの秋のカフェ/フォーラム・シリーズであった

参加された皆様には改めて感謝したい

来年の春シリーズは、東京が3月、札幌は4月を予定している

多様な方の参加を期待したい

そして、新たな変化を呼び込む風が吹くことに淡い期待を抱いている









2024年11月15日金曜日

第19回サイファイカフェSHEで『免疫から哲学としての科学へ』を読む






















今日は秋のカフェ/フォーラム・シリーズの最後となる第19回サイファイカフェSHEを開催した

参加者からの要望に応えて、拙著『免疫から哲学としての科学へ』を読むシリーズを始めることにした

今回はその第1回で、第1章を読むことにした

SHEに新らたに参加された方が4名もおられ、新鮮な空気が流れていた


やり方としては、本書を最初から読みながら、参考資料として事前に配布した材料の説明を加えるというやり方を採った

第1章は免疫の理論史、思想史の色合いが濃い内容で、中に科学という営みを考える上で重要になる歴史的な事実も含まれていた

残念ながら、そのすべてをカバーすることができなかったので、次回以降に改めて議論することにしたい

今日読んだ内容や議論された詳細については、近日中に専用サイトに掲載する予定である

訪問していただければ幸いである



関連の話題として、本書に関する書評が「文系の自然科学本の書棚」(2024年10月5日)に掲載されていている

コンパクトながら正鵠を射た書評なのでご一読いただき、本書も手に取っていただければ幸いである

この読書会は、来年3月、7月、11月にも開催する予定になっている

来年もよろしくお願いしたい






































2024年11月14日木曜日

『免疫から哲学としての科学へ』の読書会を前にして


















今日は、秋のカフェ/フォーラム最後の会を明日に控えて、その準備に追われていた

明日の会は第19回サイファイカフェSHEで、拙著『免疫から哲学としての科学へ』を読むことにしている

今回は、準備した内容を事前に配布して、当日はプロジェクターを使わないことにした

これまでも考えたことはあったが、準備を最後の最後までできるということでこのスタイルを採ることができなかった

今回は幸いにもそれができたので、明日参加者の感想を聞きながら、これからの方向性を考えることにしたい


今夜はフランスでお世話になった友人との会食があった

今年を締めくくるにはよい会となったのではないだろうか

いつもお心遣いをいただき、恐縮している

来年もよろしくお願いしたいものである







2024年11月12日火曜日

TAROの世界を味わう

































今日はトレッキングがご趣味の友人と川崎市の岡本太郎美術館で待ち合わせ

わたしは無理をせず、タクシーのお世話になった

自然の中にある美術館は素晴らしく、付属のカフェTAROでデジュネ

同年代に出てきそうな問題や昨今の政治状況が話題になったが、時間は軽やかに流れたとでも形容しておこう

わたしはその後、美術館でたっぷりとTAROの世界を味わった

そこで久し振りにいろいろな形を収めることもできた

また、TAROの世界を眺めているうちに、どこか共通するものが流れているのではないかという疑義も生じてきた




























背景に映し出される移ろいゆく映像とともにこの像をぼんやり眺めている時、変化が起こった

古代ギリシアのアナクシマンドロスが浮かんできたのである

彼は世界の始原(アルケー)を掴みようのない無限なるもの、すなわち「アペイロン」とした

TAROが求めた根源にあるものを何と呼んだのかは分からないが、共通するもののように思えたのである

因みに昨日は、古代インドのヴェーダーンタ哲学の「ブラフマン」と古代ギリシアのパルメニデスの「存在」との間に共通性があることを発見したところであった

展示には「探る」「見る」「語る」「遊ぶ」「ひらく」というキーワードが表記されていた

これは人間の基本的な行為だが、「ひらく」ところまで至るにはかなりのものが求められそうである

やはり、いつ触れてもインスパイアリングなTAROであった














2024年11月9日土曜日

第12回サイファイフォーラムFPSS、盛会の内に終わる






















今日の午後からは、第12回目を迎えるサイファイフォーラムFPSSが開かれた

今回は学生さんが4名加わり、わたしを含めて15名の会となった

そのためか、熱のこもった議論が展開した


新しい参加者が少なくなかったので、サイファイ研究所ISHEが何をやっているのか、その中で今日のサイファイフォーラムFPSSがどのような位置づけにあるのかという点について説明してから始めた

最初の演題はシリーズで進めている「科学と哲学」の6回目で、これまでの5回で扱った「ソクラテス以前の哲学者」を復習してから、プラトンと科学というテーマに入った

「ソクラテス以前の哲学者」がプラトンと良く繋がっていることが分かった


それから次のプログラムの演者が都合がつかなくなったため、わたしが代役をした

テーマとしては、日本ではほとんど知られていないマルセル・コンシュ(1922-2022)という現代フランスの哲学者を取り上げ、その哲学について議論するという内容とした


最後は、阿戸学氏による「日本の背骨としての仏教思想」というタイトルの該博な概説が展開した

それぞれの内容の詳細は近いうちに専用サイトに掲載する予定なので、そちらを参照していただければ幸いである


改めて、週末のこの時間に参加していただいた皆様には感謝したい

次回の開催は来年3月8日(土)午後を予定している

会場が変わりますのでご注意ください

次回もよろしくお願いいたします


































2024年11月7日木曜日

自著を振り返るカフェ

































オアゾの丸善で書棚を眺めている時、拙著『免疫学者のパリ心景』(医歯薬出版、2022)に出会った

刊行からすでに2年が経過しているが、まだ棚に並んでいることに驚いた

そう言えば、火曜のベルクソンカフェに初めて参加された方はこの本を精読されたようで、そこにあるテーマについてかなり詳しいお話をされていた

著者の気づかぬところでこのように読まれていることを知るのは、大いなる喜びである


ところで、参加者からの希望で、来週金曜のサイファイカフェSHEから拙著『免疫から哲学としての科学へ』(みすず書房、2023)の読書会を始めることにした

その後、この読書会を札幌のサイファイカフェでもやってほしいとの声が聞こえてきたので、来年から始めることを考えている

この流れで行くと、『パリ心景』についても振り返り、願わくば新たな発見に至る試みをやってもよいのではないか、という気にもなってくる

カフェ/フォーラムの参加者とのインタラクションからこのような展開が生まれることは、実に興味深い

これからも注意深く流れを観察していきたいものである









2024年11月6日水曜日

恒例の学友との会食

























今日は恒例となった学友との会食があった

実は、お一方が急に都合がつかなくなったためキャンセルになったのだが、連休のためにキャンセルがうまくいかず、復活した会食であった

いつもの場所で2時間ほど取り留めもない話に花が咲いた

この春で仕事をやめられたとのことで、自由な時間の中にいるとのこと

今は図書館から本を借りることが多いのだが、忘れたころにやってくるようだ

図書館がそれほど利用されているとは知らなかった

拙著 Immunity: From Science to Philosophy (CRC Press, 2024) にも目を通していただいているようだが、専門外なのでなかなかイメージが膨らまないようだ

その点では、専門外の人には不親切な書き方になっているのかもしれない

また、いろいろな展覧会にも行かれているようだ

最近では田中一村(1908-1977)の展覧会に顔を出したとのこと

詳しくは知らないのだが、生前認められたいとは願ったが、叶わずに終わった画家で、最後は奄美で創作活動をやったようだ

ただ、妥協することなく自分に向き合って仕事に打ち込んだようで、そこに本人の独自性が表現されることになったのではないだろうか

それを昨日のベルクソンカフェに肖って言うとすれば、そこにはこの世の「意見の世界」から離れて、純粋に「真理の世界」に向かう運動があったのではないだろうか

それが真理に近づいているため時を超え、今、多くの人の心を惹きつけているのだろう

人に認められないということには、それなりの意味があるということかもしれない

わたしも覗いてみたくなってきた











2024年11月5日火曜日

第10回ベルクソンカフェ、深い問いの内に終わる























今日は10回目になるベルクソンカフェが開催され、お忙しいところ4名の方が参加された

参加された方には感謝しかない

このカフェは、フランス語の哲学文献を読み、日本語で議論するという会である

今回は偶然にも先月札幌で開いた第12回サイファイカフェSHEで取り上げたテーマと重なった

古代ギリシアのソクラテス以前の哲学者に分類されるパルメニデスである

存在、無、非存在、真理、意見(ドクサ)など、根源的な問いが議論されるので、なかなか大変であった

そもそも真理は神の領域にあり、人間には到達不可能だと考える人もいる

ソクラテス以前の哲学者にかかると、科学的真理などというものもドクサの範疇に入れられる

興味深い意見交換が行われたと思う

会の議論の詳細は、近いうちに専用サイトに掲載する予定なので、ご覧いただければ幸いである

次回の開催は来年の3月で、テーマは決まり次第、この場でお知らせする予定である

これからもよろしくお願いしたい





































2024年11月1日金曜日

11月を迎えて


























今日から11月が始まったようだ

無限の中にいると境界がなくなるので、何かで確認しなければ気づかない

昨日ここに書いたことも遠い彼方に去っている

ということで、このところ珍しくなった立て続けのアップとなった


今月は、前半がカフェ/フォーラムで、後半は新しいプロジェに取り組むことになるのだろうか

カフェ/フォーラムについては現在も準備中だが、新しい気づきもあり、認識が深まってきたところもある

当日の展開にも注目したい

プロジェの方だが、これまでにも触れているように、夏からいろいろな可能性が浮かび、その間でプライオリティが毎日変わるということが起こっていたが、最近落ち着いてきたようである

ただ、それが目に見える形になるかどうかは、まだ分からない

それとは別に、今朝新たなプロジェが浮かんできた

こちらは、その気になるのかどうかが問題になるだろう

いずれにせよ、カフェ/フォーラムの間もいろいろ考えることになりそうだ