不手際があったものの、幸い7名の方の参加を得て充実した会になったと思う
今回はまず、ヒトやマウスのオーガニズム・レベルでの解析が最近明らかにしたことを振り返った
その結果、これまでは明瞭だと思われていた免疫システム内のサブシステム(自然免疫と獲得免疫)間の境界や免疫システムと他のシステム(特に神経系の例が提示された)との境界が曖昧になり、相互に親密な交流があることが見えてきた
つまり、オーガニズム全体で免疫という機能を発揮しているというイメージである
その後、細菌からヒトに至る生物界における免疫について検討した
その結果、免疫システム(基本的な機能は外敵からの防御と考えられている)は細菌からヒトに至るすべての生物に存在すること、しかしその構造やメカニズムは種によって大きく異なることなどが明らかになった
つまり、免疫は生物としての条件になっている可能性が示唆される
さらに、免疫を構成する要素を分析すると、認識、情報処理、適切な反応、その記憶という4つの過程があり、これはそのまま神経系の主要な機能要素と重なってくる
このことから、免疫の本質には認知機能があると考えられた
その場合、細菌には神経系がないので、免疫が最古の認知機能を担っていると言えるのではないかというところで終わった
会の詳しい内容は、これから
サイトにまとめる予定である
訪問していただければ幸いである
懇親会は今年の打ち上げという雰囲気で、話も盛り上がっていたようである
わたし自身の仕事についてもいくつかのサジェスチョンをいただいた
多くの課題を抱えることになった今年最後のカフェ札幌であった
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mardi 21 octobre 2025
これまでに以下のようなコメントが届いている
参加された皆様に改めて感謝したい
◉ どうもお疲れさまです。免疫の有無が生命体の定義にできそうなことに気がついたのは、大きな収穫でした。それで、Google Geminiと対話してみたら今回のカフェの内容に近い話が沢山出てきて、夜更かししてしまいました。
◉ おはようございます。昨日は久しぶりに楽しい時間を過ごし、リフレッシュすることができました。意識の問題は特に興味深く感じました。学生時代に購入して読まずにいた品川嘉也氏の『意識と脳』の序文に大谷卓造先生(京都大学の生理学者)の「意識とは外界から区別されるものとしての自己に関する意識である」という考えが紹介されていました。また4月にお会いするのを楽しみにしております。
◉ いつも素晴らしい会合を作っていただき、ありがとうございます。研究会での免疫の話は、門外漢のため詳しい点は分かりませんが、事実を捉える視点は、他の科学の研究成果を考察する上での大いなる示唆になるように思います。また、懇親会の席では、個人的な事も含め日常の生活の中で感じていることの交流が行われ、研究会と同じように実りあるものでした。このような大学のゼミを思い出させるような研究会は、札幌では貴重であり感謝しています。
◉ 有意義なレクチャーと懇親会、ありがとうございました。細菌・アーキア(“原始生物”)から顎口上綱(”高等生物”)に亘った最新(~2023年)までの免疫学的知見を展開頂きました。2時間では頭がついていけない程の濃い内容でした。その中で最古の認知・免疫システムかつラマルク的遺伝も示唆するCRISPR -Casシステムに以下の疑問が湧きました。十分に古い他の”自然免疫”の多くはその相同・相似システムとしてヒトでも機能しているのに、なぜCRISPR -Casシステムは早くから”進化”の過程で消滅してしまったのか? もしCRISPR-Casシステムが進化過程でラマルク的遺伝形式とともに存続すれば、現在の地球上の生物はどうなっていたのか?(破滅? 両極端な進化と退化?--)次回はMOSが主題となりそうで楽しみにしています。
◉ 白いものがいつ混じってもおかしくない、そんな冬の到来を肌で感じる小雨降る週末の夕方から会が始まりました。日常の生活とは異なった次元の会への参加を待ち侘び、そして実際に会が始まったことにやや興奮気味の8名の参加者(+矢倉先生)の自制した静けさで今回も始まりました。
オーガニズム・レベル、つまり個の枠内での免疫システムとして考察するところから始まり、後半は生物の進化の過程を免疫系を軸に改めて考える試み、つまり生物界に遍在するシステムとしての免疫系の省察の試みであった。暫定的ではあるが、免疫系を構成する4つの機能的要素である、認識、情報統合、反応、そして記憶という4つの要素を座標軸にしつつ、進化の過程での先天免疫、獲得免疫の再省察を通して、免疫系そのものが生命の基本ではないのかとの想像にも到る。蛇足だが、細菌の持つ防御システム、例えば侵入するファージDNAに対する防御機構としてのDNA切断制限酵素、そしてCRISPR-Casのシステム。それら細菌の持つ生命維持メカニズムを応用した形の遺伝子改変技術により現代の我々の生命科学研究が大いに推進していることの偶然さにも感嘆仕切りである。
認識、情報統合、反応、そして記憶といった要素から生物現象を振り返った場合、そのコンポーネントは神経系の構成要素と完全に重複しあうことに気づく。逆説的に、神経系で観察される情報の処理記憶の区分け、例えば意味記憶とエピソード記憶では記憶、そして追想といったプロセスに差異があることが、近年の認知症研究で知られている。そして、近時記憶と長期記憶での保持能力といった視点での認知症解釈もよく知られているところである。そういった神経系のもつコンポーネントを軸に、免疫現象を再度考え直すことも有用ではないのかとの夢想が浮かんでいる。新型コロナウイルスとそのワクチン効果など、若年者と高齢者の有効性や免疫記憶への効果など、神経系のコンポーネントからの再考察も免疫系のもつコンポーネントの新たな発見への繋がるのではないか、そういった妄想とともに来春の会への思いを抱え、雨の中で帰路についた。
◉ 10月18日のサイファイカフェSHE札幌に参加させていただき、ありがとうございました。私の頭の中にある「免疫」の大地の地平線を大幅に拡げてくれた、素晴らしい内容でした。
私なりに乱暴にまとめますと、
① 「免疫」=「生命」: 現存している生物は必ず免疫系を持っている。言い換えれば、免疫系がなければ生命は存在し得ない。
② 「免疫」=「神経」: ほぼ同義である。免疫系を持つということは、神経系を持つということである。
③ ということであれば、ユニークで優れた免疫系を持つ細菌や植物は、各々ユニークで立派な神経系を持っていると考えられる。
④「神経系」は、「意志」や「魂」といった精神的要素をも含む。
⑤そうであれば、細菌や植物も強い意志や崇高な魂を持っていると考えられる。
細菌や植物は、どんなことを考え、どんなことに笑っているのだろうか。妄想が膨れ上がるのを楽しめた会でした。次回も是非参加させていただきたいと思います。ありがとうございました。